肉牛の分類と主な種類

肉牛の全体像

牛は、まず「肉専用種」と、「乳用種」に分けられます。ここでは「肉専用種」についてご説明します。

牛の主な分類図
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ひとことで「肉牛(肉専用種)」と言っても、いろいろな種類(品種)の牛がいます。肉牛の全体像は、まず(1)肉専用種と(2)乳用種に分類できます。

(1)肉専用種(食肉専用に育てられた牛の総称です)

  • 和 牛:黒毛和種(くろげわしゅ)、褐毛和種(あかげわしゅ)、日本短角種(にほんたんかくしゅ)、無角和種(むかくわしゅ)の4品種になります。
  • 交雑種:異なる品種を交配して誕生した牛。和牛同士の交配で誕生した「和牛間交雑種」の牛と、乳用種と和牛が交配した牛がいます。F1とも呼ばれます。
  • 外国種:外国で産まれた食肉用の牛の総称。アバディーン・アンガス種、ヘレフォード種などが有名です。

2)乳用種

  • 乳用種:オスの乳牛と乳搾りを終えて食肉用に回ったメスの乳牛の総称です。ホルスタイン種が最も多く、ほかにジャージー種や交雑種などがいます。

肉牛の種類

ここでは日本に流通している代表的な牛(肉専用種)を紹介します。

和 牛

黒毛和種(雄)

明治時代に外国種と交配し改良され、昭和19年に日本固有の肉用種に認定。現在は日本全国で飼養され、国内で肥育されている和牛の90%以上がこの品種。神戸牛や松阪牛などのブランド牛と呼ばれる牛も黒毛和種です。毛色は黒で褐色を帯びていて肉質が良く「霜降り肉」と呼ばれるやわらかくて細かい脂肪が特徴。ふじなわが主に仕入れている牛肉は、この「黒毛和牛(雄)」です。

黒毛和種(雌)

「黒毛和種」の雌(メス)の写真がこちらになります。一般的にオス牛に比べメス牛の方が皮下脂肪が多く、肉質がきめ細かく柔らかい、さらにメス牛のほうが不飽和脂肪酸が多く含まれており融点が低いので、 口の中でとろけるような味わいとなります。ふじなわが主に仕入れている牛肉は、この「黒毛和牛(雌)」です。

褐毛和種(雄)

褐毛と書いて「あかげ」。あか牛とも呼ばれる品種です。毛色は黄褐色から赤褐色。在来牛に外国種を交配して改良を進めた品種です。熊本県で放牧に適する牛として改良した「肥後牛」と、高知県で韓国牛から改良された「高知系」のものがあります。

褐毛和種(雌)

「褐毛和種」の雌(メス)の写真がこちらになります。最近は消費者の健康志向が高まり、お肉がやわらかく霜降りが少ない、それでいて肉汁たっぷりな褐毛和種の人気も高まってきました。黒毛和種よりは脂肪交雑の入り方は少ないものの、草を与えた健康な赤身肉として、程よいサシ(霜降り)と赤身肉の深い味わいの両方が楽しめるという評価です。

日本短角種(雄)

毛色は濃褐色。南部牛とアメリカから輸入されたショートホーン種、デイリー・ショートホーン種を交配して改良された品種です。東北地方の北部原産で今は岩手県を中心に飼われています。育てやすい牛なのですが、頭数は少なく、貴重種です。

日本短角種(雌)

「日本短角種」の雌の写真がこちらになります。黒毛和種がサシ(霜降り)が入っているのに対して、短角種は低脂肪で旨味の基となるアミノ酸をたっぷり含む赤身の牛肉です。放牧に適した品種で、夏は放牧し、冬は里に下す「夏山冬里(なつやまふゆさと)方式」で飼育されています。

無角和種(雌)

日本の黒毛和種に、ヨーロッパで生まれた肉用牛「アバディーンアンガス種」を掛け合わせた品種です。名前のとおり角がない珍しい品種で、山口県でしか飼育されておらず、その数、約200頭。毛色は黒色ですが、黒毛和種よりも黒味が強いのが特徴。超貴重種。

補足)和牛の定義

和牛と認められるには次の4つの条件があります。これは2007年に農林水産省が定めた「和牛等特色ある食肉の表示に関するガイドライン」によって定められています。

条件1 黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種のいずれか、あるいはこの4種の交配によって産まれた交雑種である
条件2 国内で産まれ、国内で飼育された牛である
条件3 1を満たしていることが、家畜改良増殖法に基づく登録制度などによって証明できること
条件4 1と2を満たしていることが、牛トレーサビリティ制度によって確認できること

「国産牛」は日本で生産された牛で、「和牛」は明治以前から日本で独自に交配され育てられてきた品種名なのです

外国種

アバディーンアンガス(雄)

英国スコットランドで作られた品種。毛色は黒単色。西洋の牛の品種の中では最も肉質が良いとされている代表的な肉専用種で、広く世界に分布しています。日本での飼養は限られていて、寒さに強く放牧に適した品種ゆえに、北海道で交雑牛による肉生産が行なわれています。

アバディーンアンガス(雌)

「アバディーン・アンガス」の雌の写真がこちらになります。黒い毛色に無角、小柄でコンパクトな体型。肉質は柔らかくてジューシー。霜降りになりにくい赤身肉が特徴で、ショートホーン、ヘレフォードと並び「世界三大肉用種」と言われています。

ヘレフォード(雄)

英国イングランド地方・ヘレフォード州原産の肉専用種。毛色は赤褐色で、頭・頸・肩の上部、胸、体下線、下足、尾の部分が白く、このほかは褐色です。暑さや寒さなどの気象条件に強く、環境適応力の高い牛です。

ヘレフォード(雌)

「ヘレフォード」の雌の写真がこちらになります。肉用種としては大型で、枝肉歩留りも高い品種です。

乳用種

ホルスタイン(雌)

明治時代から輸入されている乳専用種ですが、牛乳生産に必要のない雄子牛は昭和40年代から牛肉生産のために肥育されています。現在は黒毛和種の雄を交配した交雑種(F1)を生産し、肉質を改善して肥育するF1肥育も盛んです。牛乳のパッケージ等に描かれている白黒まだらの牛は、このホルスタインという乳用種ですね。

ジャージー(雄)

「ジャージー牛」の雄の写真がこちらになります。 牧草肥育によって育ったジャージー牛は鉄分、βカロテンなどのビタミン類や、抗酸化作用のあるオレイン酸が豊富と言われています。

ジャージー(雌)

英領ジャージー島原産の乳牛。ホルスタインほどではないものの、世界中に広く分布していて、バター等の乳製品を大量生産している国では最重要品種とされています。和牛やホルスタインと比べると体格が小さく、成長も遅い品種で、ソーセージなどに加工されることが多いと言われています。

スーパーなどで見かける「国産牛」と表示されたお肉。あれは、ほとんどすべての場合においてホルスタインのお肉か、交雑種のお肉になります。なぜかというと「和牛」である場合には「和牛」と表記して販売されるからです。そのほうが高級なお肉として、高値で販売できますから。つまり、「国産牛」と表記されているお肉は「和牛とうたって販売できない国産牛」、つまりホルスタインや交雑種のお肉ということになります。

なお、和牛の方がサシ(霜降り)が入っているため甘み、濃厚さがありますが、脂肪分が多いのでカロリーが高くなります。国産牛のお肉はクセやしつこさが少ないため食べやすいのが特徴です。どちらの牛肉も一長一短です。料理の種類や、ご予算に応じて上手に選び、それぞれの良いところを理解した上で気持ちよくお召し上がりください。

なお、このページの品種画像はすべて、独立行政法人 家畜改良センター様にご提供いただきました。感謝申し上げます。